電動歯ブラシのとある商品があったとします。
メーカーは歯垢除去力アップ。とか。
歯垢99%除去とか。
電動歯ブラシの方が歯垢がよくとれるんだ!!!
という言説をみかけます。
まぁ、言いたい放題な部分もありますね。
景品表示法とか色々ありますけど。。
メーカーもそりゃ大きな企業でしたらこれに抵触するような表現まではしません。
じゃあですよ。
仮にこんな実験をしたとしましょう。
歯医者さんと歯科衛生士さんを集めました。
100人位です。
それぞれに歯磨きテストを実施します。
手磨きを実施して、歯垢除去率を計測します。
またある時には電動歯ブラシで実施して、その結果の歯垢除去率を計測します。
A歯科医師 手磨き94% 電動歯ブラシ96%
B歯科医師 手磨き90% 電動歯ブラシ88%
A歯科衛生士 手磨き96% 電動歯ブラシ96%
B歯科衛生士 手磨き94% 電動歯ブラシ92%
C歯科衛生士 手磨き90% 電動歯ブラシ95%
※上記の歯垢除去率はあくまでイメージです(仮定です)※
実際に生命科学の分野において、人で実験するとこのようにバラつきます。
かなりバラつくんですよ!
結果としては人によって手磨きの方が上手だったり。電動の方がとれる人も居たり。
じゃ、この5人の結果をみて、電動歯ブラシと手磨きのどっちが優れていると言えますか?
絶対にいえませんね。
ここで何故言えないか考えてみてください。
5人で何がわかるんじゃい!
その通り、仰るとおりでございます。
メーカーが歯垢除去率99%とかそういうように宣伝されますと。
我々歯科医師としては、頭の中が「???}となってしまうわけですよ。
だって、全員が99%とかにならないんですよ。
そんなことはあり得ないわけですからね。
もしそんなデータが出たら小保、かた。。はる。。子。。さん的データになってしまうわけです。
必要な人数と適切なデータに基づいて、統計学的手法を使ってどちらが有意か調べる。
医療って、こういう結果に基づいて治療の判断をしたりするわけですよね。
とある患者さんがいうんですよ。
なんで歯石とり半年に一回やねん!そんなん一年に一回でかめへんやろ!
えっ?そんな感情論で我々は話しているわけではありません。
そんな子供みたいな単純な理屈で話していません。
薬を一日3回飲んでください。これは薬を効かせるために必要な量と回数を十分に吟味して。
根拠に基づいて3回の量を計算されて服薬指示をだしているのですね。
感情とかノリであ~あなたは1日3回くらいね~♪なんてテキトーなこと話しているわけではないんですよね。
これがもし、歯石取りが1年に1回で歯周病予防が成立するのであれば1年に1回。
医学的根拠をもってして半年に一回必要であれば半年に一回となるわけです。
また多くの方が治療の「「目的と手段」」を間違えてしまいます。
歯石取りをしたいんじゃないんです。歯石取りはあくまで「目的」を叶えるための「手段」であります。
歯周病予防がしたいので(目的)、歯石をとるんです(手段)。
とある歯石取りにいらっしゃった患者様。
写真を見て。
「え~~!歯石ついているじゃないですか!頑張って磨いたのに!これは磨けてないってことですか?」
貴方様は歯石をとりに来たのですか?歯石取りが目的ですか?
歯周病予防が目的です。そのための手段として歯石をとりに来ていただいているわけです。
歯石は我々歯科医師も歯科衛生士にも付着します。
それは我々をもってしても歯垢除去率が99%にも達しないからです(笑)
半年も経過すりゃ溜まっています。
そしてさらに考えてみましょう。「目的と手段」
歯垢除去力って、そもそも何パーセントになったら虫歯予防効果や歯周病予防効果がよくなるの?
貴方はそもそも歯垢が取りたいのですか。歯垢を取るのが目的ですか?
歯垢をとるのは手段でありまして。
目的は歯周病や虫歯を防ぐためでしょう。
例えばはっきりと言えることは歯垢除去率が95%⇒96%に改善したところで、
虫歯予防効果なんて効果は上がらないでしょう。
もしあなたの場合手磨きで95%磨ける人だとして、あなたが電動歯ブラシを使えば96%に改善します、
って聞きゃ電動歯ブラシ買いたいですか?
そりゃ40%しか汚れがとれない人が80%以上歯垢除去が出来るようになれば、
その方が飛躍的に病気の予防効果はアップするでしょう。
(これに関してははっきりと医学的根拠をもって説明できるものです。)
酷いものになりますと。
女優の〇〇さんも使用。
これは医学的根拠になりますか?(笑)
歯科医師の〇〇が推奨。これも笑わせます。
芸能事務所に所属しているキレイめな女性歯科医師もいるんです。
広告宣伝の際に、その歯科医師推奨って頼めばいいんですよ。
その芸能事務所の所属の歯科医師が推奨したところで、一切歯垢はとれませんので(笑)
情報化社会。
多くの様々な情報があれど。玉石混交。
患者様、「せんせー、そんなこといいはりますけど、ワタシら素人にはわかりませんやん!」
私、「おっしゃるとおりですね。」
患者様、「ほなどないしたらええですの?」
私、「歯のことは、すべてうのみにせず、いったん落ち着いて。それから信頼できる歯のプロに聞いてから行動するのが良いでしょうね。」