顎関節症の治療に対する考え方は、
歯科医師の年代や、歯科医師自身の考え方によっても、
治療方法が大きく異なります。
ある日、お隣の町からAさんが当院にご来院されました。
柔らかいマウスピース。ゴム状のものを歯科医師に勧められ使用中。
柔らかいマウスピース。
噛みあわせの学会や、顎関節症学会でも、基本的には否定されています。
一方、どこかの歯科医師向けのセミナーで、柔らかいマウスピースを教えるセミナーのようなものも、
歯科医院にダイレクトメール等で届いているのを見たことがあります。
例えば、当院においては、絶対に柔らかいマウスピースを使用したりしません!!!
柔らかいマウスピースは、噛みあわせが変化するとの懸念が、過去からずっと言われているわけです。
ヨーロッパの論文ですが、柔らかいマウスピースによって噛みあわせが変化することを調べた論文があります。
なかなか頑張っている論文なのですが、一つ問題点があります。
噛みあわせの変化を完璧に調べる方法が、イマイチなんです。
頑張ったのに評価の低い、悲しい論文ですね。
それでも、各学会のお偉いさん、噛みあわせの研究者は、噛みあわせの変化を懸念しているのです。
これは、経験的にも知っています。
全国の大学病院で使用している、顎関節や噛みあわせに対するマウスピース。
基本的には、ハードタイプ(硬いもの)を使用しています。
では、なぜ町医者さんで、ソフトタイプを使っている医院さんがあるのでしょうか。
セミナーでは、ソフトタイプで顎関節症が治るとの症例をイッパイ見せられます。
聞いててなるほど、ソフトタイプのマウスピースは有効なんだなと思わせるほど。
その町医者さんは、信じているのですよね。有効と。
顎関節症の治療のHPを見ることがあります。
アヤシイものがイッパイあります!!!!!
くれぐれもお気をつけください。
ネットで閲覧できる情報は、正しいものも、正しくないものもイッパイあります。
とりあえず、安易に歯は削らないでください!!!!!
顎関節症で、「噛みあわせが悪いから、ここの噛みあわせを削りましょう」
こういうタイプの歯医者さんは、現状でも、ものすんごい沢山いらっしゃいます。
私たちが、歯科医師となるべく勉強し、大学卒業時に歯科医師国家試験というのを受けます。
国家試験の問題で、「顎関節症の方で、噛みあわせがひっかかっていて、噛みあわせを調整する」
という問題があった場合、答えは正解だったんです!!!!
私が国家試験をうけたのは、もう18年くらい前ですが、
当時大問題が発生したのです。
上記の顎関節症に「噛みあわせを調整する」という問題に対し、答えが不正解になったのです。
従来は○なのに、いきなり×?
結局、この設問に関しては不適切問題となり、採点からは除外されたようです。
ちょうど、このころを境に我々歯科医師が受ける教育の内容が変化もしています。
様々な社会的な背景があり、様々な考えの歯科医師が生まれる結果となっているのです。
顎関節症学会では、歯科医師向けに様々な情報を発信しています。
でも多くの歯科医師は目にしません。
まとめ。
1:顎関節症の治療は、歯科医師によって考えや治療法が異なり、ごく稀ですがかなり不適切な治療方法もあります。
2:顎関節症は、マウスピースを使用する場合がありますが、全ての患者さんに適用するわけではありません。
ただし使用する場合は、部分的なマウスピースや柔らかいタイプは推奨しません。
3:【警鐘】安易に歯を削らないでください!歯を削る必要があると考えられるケースはかなり限定的です。
かなり削ってしまうケースを目にすることがあります、一旦削ると元に戻りません。