我々歯科医は日常的に診療している中で、様々な経験をします。
スタッフからは、診療の内容について先生本を一冊書けそうですよね?と言われたこともあり、
通常の診療とかけ離れたドラマがあります。
現在当院に通院中の患者様に関しては、倫理上書けませんので過去の経験を元に、話し口調で書いてみようと思います。
事件簿パート1
「私が最も腸が煮えくり返った患者さんの一言」
ある日。50代くらいの女性です。当時大学教授の方。身なりもきちんとしているのですが、
どうもお口の中の状態が悪い。歯茎の状態も悪い。
こういったケースでは、やはり歯磨きの状態も良くないわけですよね。
「過去に一番頭にきた患者さん」
当時私も28歳くらいですから、もう17年くらい前の話ですが。
大阪梅田の審美歯科ですよ。
ものすごく気合満点で患者さんに歯のコンディションを上げてもらおうと歯周病予防の説明をしようとしたんです。
話始めでいきなり発言を遮られたんです。
女性は言います。
「この先の説明をしたら説明料がかかるんですよね。私は知っているんです。そんな説明はいらない」と。
「何しに来たんだ!」って言えないですよ(笑)ほぼ初対面なのですが。。
貴方は歯周病が発生していますとかすらもう言えない。
確かにその説明を行うと窓口での支払いは300円ほど高くなる(当時の費用で)
しかしこちら側としてはワリに合わないけど一生懸命説明しようとしている。
こうした患者さんは、人とコミュニケーションするなかで一切人を信用しない。
自分の希望通りのことが通ればそれで満足。
仮にも人を教育する立場の人からそんな発言が飛び出してくるとは驚愕でした。
信じられないかもしれませんが事実です。
事件簿パート2
60代男性。歯石だらけ。。歯周病に罹患しています。
受診理由は虫歯を直しに来たわけです。
虫歯をちょいちょいと詰めればいいわけですが、これは大したことありません。
歯茎の方が大問題なのです。
「歯茎の状態が○○ですので、次回は歯石取りをしましょう!」
と説明申し上げますと。
男性は、「歯石なんて取りたくない!」
私、「歯石取りをしたくない何か理由でもおありでしょうか?」
男性、「歯石取りをしたら血だらけになるじゃないか!だからしたくないんだ!」
実は歯周病も歯肉炎もない健康な歯茎の方の歯石をとりますと、歯石取りの際に一滴も血はでません。
よく患者さんに言われます。
「最初歯石取りを始めたころは血だらけになっていたのに、最近は血がでないですねぇ」
歯茎の状態が改善し、炎症が収まり、歯周病や歯肉炎が治癒しているからです。
結果、説明をまったく聞き入れていただけず歯石取りにはいらっしゃいませんでした。
想像がつくのですが、もう10年以上前のことですので、今頃歯周病に苦しんでいらっしゃると思うと残念でなりません。
事件簿パート3
これも15年以上前のことです。
梅田の審美歯科での出来事です。
とある男性が詰め物が取れたと言って詰め物を持ってこられました。
お口の中を拝見してみますと。。
詰め物の裏には虫歯が発生し、詰め物を一応は合わせてはみたものの隙間だらけ。
とても再装着できる状態ではありません。
何気なくこれは虫歯がありますし、隙間もありますからつくりかえましょう。
一週間後に来れば新しい詰め物が装着されてハイおしまい。
簡単な治療です。
男性は頑なに詰め物をつけろと強要してくるのです。
説得には応じません。
こういった場合、医療従事者として法的なことも考え併せてしなければならないことがあります。
「「そのままつけた時に結果どうなるかを説明しなければならないのです」」
そうすれば罪には問われません。
逆に、患者さんに脅されたとしても、嘘をいうことは罪になるのです。
当然ながら、
「これをそのまま装着すれば早期に外れてくるし、中に虫歯も残りますので虫歯は進行してしまうのは明白です。
それでもつけろと仰るのですか?」
まぁ、必要な説明をするわけです。
クレーマーに貴重な時間を費やすのもどうかとは判断されますので、
そのままつけて帰っていただいた結果。
3か月後。また外れて外れたものを持ってきてまたつけろと。。
さっさと作り替えておけば、一週間後には虫歯もとれた状態でしっかりした詰め物ができたでしょうに。。
延々とこれを繰り返す結果となるわけです。
一方的に患者さんを責めることもできないわけですよね。
こういう患者さんて、気難しいことを言ってくる、その背景があるわけです。
仮にですが。。仮にですよ。。
おそらく前の歯医者さんで作った詰め物ですが、
「ウチの詰め物は素晴らしくよくできているので20年くらいは持つだろうから、安心してね。」
なんて言われていて、3年くらいで外れているとか。
そういう背景があると、患者さんはその歯科医だけでなく歯科医全体に不信感を持つようになります。
診療事件簿4
自分の意思を曲げないおばあちゃん。
とある医院にて、入れ歯を作ったそうで。。あまりにも出来栄えが悪い酷い入れ歯。
びっくりするくらいの、合ってない入れ歯。
色々と説明して調整するなり、もう一度新しく作成するなり。。
何を言っても聞き入れません。
「私はここの入れ歯の留め金を切って欲しいのです」
驚愕した一言でありまして。
私、「ここのバネを切るとですね。入れ歯が外れます。まったく抑えが効かなくなるのでできません」
何度も何度も説明してもしつこく食い下がる。
次回の来院時にも同様にバネを切ってくれと主張。
3回目でこちらの心がポッキリ折れました(笑)
私、「そこまで言われるのなら切りますが、その瞬間から入れ歯が外れまくって、今日の夕ご飯も食べられなくなりますよ」
「ひょっとしたら、今日のここからの帰りで口を動かしただけで入れ歯が外れるかもしれません」
「そうなっても異論はないですか?」
おばあちゃん「構わないし文句も言わないのでサッサと切って欲しい」
↓
で、入れ歯の留め金を切りました
↓
お口の中に装着しました。
↓
ポロリと外れたようで。。
おばあちゃんは無言でした(笑)私も思わず無言。。
その日以来、そのおばあちゃんとお会いする機会はありませんでした。
元々人の言うことを信用しない性質。これは生い立ちにあることが多いそうです。
+専門職の内容に関しては皆さんが考えてもそう簡単に考えは及びません。
ましてやインターネットに書いていた等のとても偏った内容の知識を下手に得てしまったり、
思い込みをこちらに押し付けてしまいますと
往々にして診療の妨げになることも多いのです。