ながせデンタルクリニックのコラム

2022.09.26

歯周病治療基本的な事項にして最大の関門

歯周病治療をしていて、

1:長期的に満足な結果が得られる場合

2:短期的に改善したが、その後再発してしまう場合

3:そもそも病状が改善できないケース

4:短期的には満足な結果を得られなかったが、長期的には成功する場合

 

どのパターンも存在します。

もちろん治療を受ける立場になってみると、1番の長期的に満足な治癒が得られるほうが良いでしょう。

しかし皆そうはなりません。

 

これは、圧倒的な患者さんの知識不足と理解不足に影響を受けるのです。

 

歯周病は数ある病気の中で、これほどセルフケアに結果を依存している病気は存在しないと思います。

 

私が過去に参加した学会で、某エライ先生が仰るのです。

「歯周病治療は患者さんが、この歯医者に来れば治してもらえると思ったら負け。

おんぶにだっこで患者さんが歯医者さんに寄り掛かったら負け。」

 

実際に治療していく過程でセルフケア(歯磨き歯間ブラシ等を用いた)で7割~8割程度改善する、

歯石取りやその他の治療で2割~3割さらに改善するといったところでしょうか。

 

つまりどれほど最高かつ最良の治療を施そうが、セルフケアを怠ると全く治癒しないという結果に陥ります。

 

本日重症の歯周病が約十年前に快方に向かい、その後の十年間のメンテナンスで、

一切悪くなることもなく、歯茎は健康なままの患者さんがいらっしゃいました。

本日もパーフェクトでした。

 

しかし、一旦よくなった歯周病が再発、その後むしろ悪化といった患者さんも多いのです。

一度治療を施し、歯周病が発生したショックからかかなり歯ブラシも頑張り。

数か月後に抜群に歯茎の状態が良くなって。

まぁ最近調子ええなぁ。歯茎も腫れないなぁ。

なんとなく喉元過ぎれば熱さもわすれつつ、歯磨きの仕方が元に戻り。

歯間ブラシも面倒になり。

歯石取りも3か月後に来院してください!と言われていたのにも関わらず。

もうちょっと先でもエエかなぁと先送りし。

 

結果初診で来た時よりもむしろ悪化している方も。

 

ここで少々難しい話をします。

初診時に歯周病のPCR検査をします。(歯周病のPCR検査です。コロナではありません)

歯周病をお持ちの患者さんは大量の歯周病菌が検出されます。

これが治療がうまく行き、患者さんのセルフケアが良好な場合。

治療終了後の約2週間後や1か月後に再びPCR検査をしたとします。

するとなんとですね。PCR検査で「検出限界以下」と表示されることが多いのです。

これはPCR検査で検出できる限界以下の量しか歯周病菌がいないことを意味します。

 

だがしかしです。

例えば3か月後に再度PCR検査をかけたとします。

すると歯周病治療直後にいなかった歯周病菌がPCR検査で検出されるようになってくるのです。

お口でそのような変化が起きていることも知らず。

 

当然歯周病治療を受けたから調子がいい腫れない痛くない

だから歯石取りなんてまた今度でいっか~!なんて考えがちです。

 

結果一年後や二年後に歯茎が腫れたと再来院されます。

結果初診時より悪くなっていることが生じているのです。

 

 

また言葉遣いが悪いのですがそこはご容赦の上読み進んでください。

患者さんが自主的に頼んでもないことをする

 

歯周病治療を終え、一か月後にですね。

PCR検査で歯周病菌が検出限界以下。

つまり、歯周病菌が検査で見つからないわけですね。

病状が改善傾向にある方は少なくともお口全体の菌のうち、歯周病菌の割合が1%以下になっています。

難しい言葉で言い換えますと。

「総菌数に対する歯周病菌の割合が1パーセント以下」となるわけです。

 

簡単な言葉で言い換えると。

菌が100匹いたら、歯周病菌はそのうち1匹に達していないということです。

 

「せんせ~!歯周病菌を殺菌しようとしたんですよ!えらいでしょ!エッヘン!」

殺菌のうがい薬をご自身で積極的にお買い求めになられたんです。

そのお気持ちはありがたく受け止めなくてはなりませんが。

 

アカデミックな言い方ではありませんが。

菌100匹中悪い菌が一匹以下。

悪くない良い子ちゃんが99匹ならば、そこから殺菌したら

良い子ちゃんばっかり死にそうですよね。

 

結果として、殺菌のうがい薬をしつつも綺麗に歯を磨いたり歯間ブラシをしたりしていると、

往々にして結果が悪くなかったりするものですが。

うがい薬を過信して歯磨きが疎かになってしまいますともう大変です。

 

 

せんせー!歯科衛生士さんが歯間ブラシせーゆうもんですから。

ゴムの歯間ブラシを買ってやりました!!

(えっ!ゴムのを使ってって言ってませんやん!)

(心の声)

(歯磨き指導の時にはゴムのタイプじゃなくて、ブラシタイプでお話したはずです。)

だってTVの宣伝でやってましたもん。

(心の声)

(うっ!テレビのCMの方の信用度>>>我々の説明!なのですか~)

 

ブラシのついた歯間ブラシ⇒歯肉の改善

という医学的な根拠・証拠は得られています。

これは歯周病学の学者さんで異を唱える人は誰一人としていないでしょう。

ゴムタイプの歯間ブラシ⇒歯肉の改善

という医学的な根拠・証拠は乏しく不十分です。

現状はブラシタイプのものをお勧めします。

 

 

話は変わりますが。3年ぶりに歯医者さんに来た患者様。

歯石が沈着している様子を写真に取りお見せします。

あーら。歯石が沢山溜まっちゃっています。

その歯石にショックをお受けになられたのでしょうか。

落ち込み気味に、

「これってちゃんと歯を磨けていなかったことでしょうか??」

これ我々歯科医師がけっこう言われる言葉で本当にあるあるなのですが、

答えはNO!です。

仮に患者さんの仰っていることが正しければ、

きちんと磨く=歯石はつかない

ということになります。

 

我々歯科医師や歯科衛生士も自身の歯を磨きます。

かなり丁寧に頑張って磨きます。そりゃ歯のプロですもの。

しかし、歯垢除去率なんてよくて90%~95%

5%~10%は磨き残しをしてしまうのですよ。(これは事実です)

 

その残った歯垢が唾液中のミネラル分を取り込んで硬くなって歯に固着する。

これが歯石です。

日々積もっていきます。歯石の付着を物理的に避けることは不可能なのです。

よって、我々歯科医師も歯科衛生士も歯石取りは定期的に受けます。

 

もちろん3か月や半年で歯石取りを行うと、3年貯めた分よりは歯石は少ないというものです。

 

歯周病を予防するにも治療をするにもですね。

シンプルに考えてください。複雑なことは要りません。

実は①歯磨き等のセルフケアと②定期的な歯石取りの受診が大きなウエートを占めるわけです。

このシンプルなことが正しく理解できるかどうかが

歯周病の治療の成否を左右します。

 

 

「歯の根元の部分を磨きましょう!」」

これシンプルな話ですよね。

複雑な話ではありません。

歯の根元の部分の細菌が歯茎の中に入り込む病気が歯周病ですからね。

 

こんなシンプルな話一つとっても患者様の反応や理解は様々なんですね。

 

1:なるほどなるほどと根元を磨いてみようとする方。

2:言われたその日の晩はそれなりに意識して磨いてみたものの3日坊主で

数日で元の磨き方に戻っちゃう方

3:歯の付け根を磨くのにそもそも拒否感、抵抗感のある方

(根元磨いたらハグキ傷ついて痩せたらどないしてくれはりますの?

実際に言われたことがある言葉です。)

4:数十年来根元以外の部分を磨く癖が出来てしまっているのでどうしても癖が抜けきれない方。

5:歯の外側(頬の側)の付け根は一生懸命磨いても、内側(舌の側)は付け根を一切磨いていない方。

6:歯の付け根を磨くことは歯周病予防や治療において重要なウエートを占めるのにも関わらず、

その重要性をいまいち重要だと捉えていない方。(あー!なんとなく根元磨くのが大事なんか~程度)

7:歯の根元を一生懸命磨きすぎて、次回来た時には擦り傷だらけになっている方

(歯ブラシがカタイか、力の入れすぎかもしれません)

8:歯の根元にブラシを一生懸命当てようと努力をしてみたものの上手に当て切れていない方

 

そしてですね。

とりあえず頑張って歯磨きの練習をしてみるわけですね。

すると一つの大問題が浮上します!

この問題は患者さんからよく言われる、

いわゆる「あるある」ですね。

 

「せんせ~!自分なりには頑張って磨いてみたものの、ホンマにこれでエエのかわからへん」

「これでちゃんと歯垢は取れてますか?」

 

私の経験則ですが、上記の言葉を発した方は概ねよく磨けています。

意識をして磨けば劇的に変化します。かなり磨けるようになるのです。

そもそも意識をされなかった方は残念ながら磨けてはいません。

 

それでいいんです。

継続してメンテナンスに通院していただきたいのです。

通院ごとに歯磨きのチェックをします。

各人が自身の苦手部位や磨き残し部位を知っていただき、

歯磨き時のこれからの注意点やポイントをお伝えします。

そうしながら少しづつでもいいので歯磨き方法を改善していきます。

 

すると多くの方は上達するものです。


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